1.漢方治療のQ&A
- 大久保医院では、かぜ症候群の治療に漢方治療していますがなぜですか。
かぜウイルス感染による感冒は、病気の進行に一連の流れがあります。漢方では、この流れを病期とよんでいます。又かぜ症候群に罹患した時、その患者の体力によって病状が変ります。
この病期、体力によって漢方治療では、薬剤を選択します。この病期・体力の概念は、西洋医学にはありません。漢方治療の方が、きめ細かく、合理的であるので、大久保医院では、かぜ症候群に漢方治療をおこなっています- 漢方エキス剤をどうしても味が悪く服用できません。どうしたらよいですか。
- 小児が飲みにくい場合は、ジュース、蜂蜜(1歳以上)、砂糖等をを加えて与えます。
- 乳幼児で上手に飲めない時は、少量のお湯で練り、指先でこれを頬部の内側に塗りつけて与えます。
- 漢方治療が適している疾患と西洋剤治療の適した疾患がありますか。
かぜ症候群の治療は、漢方治療が適しています。慢性疾患でも漢方治療がてきしている疾患も沢山報告されていますが、当院では、以下の慢性疾患には積極的に漢方治療をしておりません。
糖尿病、高脂血症、高血圧症の治療は、西洋剤治療の方が適しています。当院では、それらの疾患には、原則として西洋剤治療を行っております。これらの疾患に随伴する症状の治療には、漢方剤の併用を試みています。
2.発熱のQ&A
- 発熱の際どのように対応したらよいでしょうか..
突然の発熱の際は、その発熱の原因を考える必要があります。その原因を考える上で、発熱に伴う他の症状の有無が重要になります。更にそれらの症状が出現してから何日目の発熱か が重要な情報です。
上記のことを考えずに、発熱を知ってすぐに解熱剤を服用するような行動をとってはいけません。発熱の原因でもっとも多いのが、かぜ症候群です。このかぜ症候群の治療は、漢方治療が西洋治療より優れています。発熱が数日続き、上気道炎の症状(咳、鼻水など)がない場合は、重い病気が隠れている可能性が高いので、近くの医療機関を受診してください。- かぜ症候群の発熱にどう対応したらよいでしょうか..
かぜウイルス感染による感冒は、病気の進行に一連の流れがあります。
病気の初期(漢方医学による太陽病期)、中期(太陽少陽中間期)、後期(少陽病期)と進行します。病気の初期の太陽病期は、病邪(主にウイルス)に罹患し、生体がその病邪を排除しようと反応する時期です。その時期の症状は、発熱・頭痛・悪寒、肩のこり、節々の痛みなどです。この時期の発熱は、生体が病邪に打ち勝とうと争い、病邪に打ち勝つレベルまで体温を上昇させているので、西洋剤の解熱剤の使用は原則として禁忌です。漢方治療では、この太陽病期には、葛根湯、麻黄湯、桂麻各半湯を服用しますが、いずれも病邪に打ち勝つレベルまで体温を上昇させ、発汗を誘導します。
発汗し、少し熱が下がった時期が、かぜ症候群の中期:太陽少陽中間期です。病邪に生体がほぼ打ち勝った場合は、この時期に平熱になりますが、打ち勝ちが弱い場合は、38度台の発熱が残る場合もあります。通常は、この時期も西洋剤の解熱剤は必要としません。この時期は、柴胡桂枝湯がよく処方されます。
かぜ症候群にかかり、数日して、咳、口の中が苦い、食欲の低下、熱が出たり下がったりするなどの症状が出現したときが、少陽病期と呼びます。この時期は、生体の免疫力を動員して病邪に反応している状況です。この時期も西洋剤の解熱剤は必要としません。この時期は、小柴胡湯がよく処方されます。
以上のとおり、かぜ症候群の治療で、西洋剤の解熱剤を用いることはほとんどなく、かえって使用すると病気の時期、程度を隠すことになり、回復をながびかせます。
- 解熱剤はどの時点で使用したらよいでしょうか...
上記で述べたように、かぜ症候群を漢方治療する場合、西洋剤の解熱剤を使用することはほとんどありません。40℃近くに体温が上昇したとき、夜間就寝前で発熱のため機嫌が悪い場合に解熱剤を使用することには反対はしていません。
多くの人が使っている体温計は、数分で計れる電子体温計ですが、この体温計は、予想体温を表示しますので、高熱の場合高めに表示されることがありますので、体温が表示したあと3-5分そのまま腋下にはさんでおき、その後に読み取るようにすると水銀体温計とおなじ値に近づきます。水銀体温計では、40℃を超えることはめったにありません。
- 解熱剤を使用するとしたらどの解熱剤が安全でしょうか..
安全に使える解熱剤は、アセトアミノフェンです。薬剤名としては、カロナール細粒、カロナール錠、アルピニー座薬、アンヒバ座薬などです。
上記の解熱剤を頓服で服用する方法が最も安全です。
- 発熱の場合冷やしたほうがよいのでしょうか....
かぜ症候群の初期(太陽病期)では、病邪に打ち勝つレベルまで体温を上昇させますので、原則的は冷やすことを勧めていません。発汗後は、病人が望めば冷やすことに反対はしていません。
- 高い熱で脳炎にならないでしょうか
39℃~40℃の高熱で脳炎になることはありません。脳炎は、高い熱で発症するものではなく、脳にウイルスが感染することによります。脳炎になると体温中枢が障害(破壊)されて高熱を伴うことがあります。脳炎と高熱の関係は、脳炎の結果としての高熱です。
3.インフルエンザのQ&A
- インフルエンザの治療の3原則とはなんですか。
インフルエンザの治療の原則は以下の3つです。
- インフルエンザにかかったなと感じた時の初期対応:
インフルエンザの潜伏期間は2-3日です。周りの人がインフルエンザと診断され、その後2-3日後に突然の高熱(38℃以上)、節々の痛み、咳が出現したら、まずインフルエンザにかかったと考えて間違いありません。暖かくして、床に入りひたすら眠ることです。発病が、診療時間以外の時間帯で全身状態に異常がなかったら、以下の注意点を守り翌日の診療で充分対応できます。 - 総合感冒薬、家庭にある解熱剤を服用しないこと:
上記の症状が出ると、すぐに総合感冒薬を服用する方が多いですが、服用してはいけません。総合感冒薬には数種類の鎮痛消炎剤(解熱剤)を含有していますが、これらの薬は、各人のもっている生理的な防衛・治癒機転を障害します。その結果病状が複雑になり、経過が通常より長引きます。 - 発熱は生体にとって有利な防衛機構と考えること:
高い熱がでると、熱を下げようと解熱剤の服用や、氷枕などで体温を下げようと試みますが、生体の防衛機転にとって不利な対応です。インフルエンザにかかると他の感冒より高熱になるのは、それだけ、ウイルス(病邪)が強いからで、それに反応して高熱になるのです。病初期の高熱は、強力なウイルス(病邪)にたいする最大の防衛反応です。この高熱状態が1-2日続くことにより、ウイルスの増殖を防いでいるのです。
- インフルエンザにかかったなと感じた時の初期対応:
- 大久保医院でのインフルエンザの治療方法をどのようですか。
インフルエンザの迅速診断キットが容易に利用できるようになり、さらに抗インフルエンザ薬(商品名:タミフル、イナビル)が成人、その後小児にも広く使用されるようになり、インフルエンザの治療も大きく変化しました。
抗インフルエンザ薬と漢方製剤を用いて、当院では以下のとおり行っています。
- 診断:インフルエンザの流行時期に、突然の高熱(38℃以上)、節々の痛み、乾性の咳を訴えて来院の際は、インフルエンザ迅速診断キットを用いて診断します。
- 初期治療(1日目)
上記の診断キットで陽性の際は、抗インフルエンザ薬を単独投与し、翌日に再診していただいています。
- 中期治療(2日目~3日目)
抗インフルエンザ薬の単独投与で翌日にはほとんどが汗をかいて解熱し、平熱となります。汗をかいても発熱、頭痛、咳などの症状が強い場合は、柴胡桂枝湯を併用します。症状が強くない場合は、抗インフルエンザ薬のみで経過を観察します。
- 後期治療(4日以降)
後期で、湿性の咳が徐々に強くなる場合は、小柴胡湯と麻杏甘石湯を合方で処方します。
後期に再熱(2相性発熱後期)の場合は、CRPを検査し、高値なら抗菌剤(PC剤)を、低値なら抗菌剤(マクロライド型)を併用します。